とある町に、昔話を紙芝居にして話を聞かせるおじいさんがいた。  おじいさんが現れるタイミングはいつも夕方。おじいさんは何かの仕事をしているようで、それが終わったタイミングで町の広場に現れるのだ。おじいさんが準備を始めると、どこから情報を聞きつけたのか、子供たちが集まってくる。  そして子供たちは、いつものように言うのだ。 「今日は勇者の話をするの?」  勇者の話。それは少し前、この世界で起きた『災厄』を振り払った勇者のことだった。  世界が平和になった今、勇者の物語は伝説となり、そして昔話となっている。  しかし、それも誰かが語り継がなければいつか薄れていってしまう。  それを薄れさせるわけにはいかなかった。  それを人々の記憶から消してはならなかった。  おじいさんもまた、勇者とともに戦った一員として、あの出来事を後世に語り継がなければならないと――そう思っていたからだ。  おじいさんは口を開いて、話を始めました。 「それじゃ、話を始めようか。それは、ラドーム学院というある学園から物語は始まります――」  こうして語られるのは勇者の物語。  これは運命を翻弄させられる、一人の少年の物語。